血と絶望が交錯する未来──『新世紀エヴァンゲリオン』が描く心の深淵

静寂に包まれたネルフ第壱種格納庫。碇シンジは朽ちかけたプラグスーツの胸をそっと押さえ、「ぼく…逃げてばかりだ」と小さく呟いた。背後で観測装置の赤ランプが淡く瞬き、窓の向こうには“使徒”第壱号機を思わせる巨大な影が横切る。十代の少年少女が、世界の命運を背負って戦う──その重圧と葛藤が、淡い心の闇を浮かび上がらせる。

西暦2000年に起きた南極大陸“セカンド・インパクト”から十五年後。謎の巨大生命体“使徒”が突如襲来し、人類は汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」を開発して対抗する。だが、“エヴァ”を操るパイロットには過酷な“同調”の試練が待ち受ける。初号機に乗り込むシンジは、父・碇ゲンドウとの溝、綾波レイや惣流・アスカ・ラングレーとの複雑な関係、そして自身の価値を見出せない自我の闇と戦いながら、使徒との死闘に挑む。

貞本義行氏がコミカライズした本作は、テレビアニメ版や劇場版とは異なる結末を描く“もう一つのエヴァ”だ。紙とペンによる繊細な絵柄は、思春期特有の揺らぎを余すところなく捉え、キャラクターの表情の機微や、胸を締めつける心理描写を鮮やかに映し出す。初号機の瞳が天を仰ぎ、胸部装甲が砕け散る一瞬が、モノクロとは思えないほどの躍動感で刻まれている。

アニメ版の象徴的なシーン、使徒の殲滅、ATフィールドの閃光、そしてサードインパクトの予兆──それらがコミックでは新たな視点で再構成され、読者は映像とは違う深みあるドラマを味わえる。シンジの苦悶、レイの無垢、アスカの誇りと孤独、ミサトの母性と背負った罪──14歳の少年少女の胸中に渦巻く感情は、読む者の胸にも鋭い波紋を走らせる。

初めて手に取るなら、無料試し読みサイトで冒頭を確かめてほしい。以下のサイトで第1巻の序盤が公開中だ:

パイロット席に座り、コクピットの冷たい金属を感じ、シンクロ率が高まる鼓動を聴くがごとく――あなたも“もう一つのエヴァ”を体感してほしい。

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