夕暮れに染まる京都の路地裏。閉ざされた扉の前で、緋村剣心は柔らかな声で呟いた。「もう二度と、刃を人に向けはしない――」その言葉と同時に、逆刃刀の切っ先がかすかに光を反射し、頬に浮かぶ十字の傷跡が淡い朱色に染まる。背後から迫る足音にも動じず、剣心の瞳には決意と哀愁が交錯していた。かつて“人斬り抜刀斎”と恐れられた男が、不殺(ころさず)の誓いを胸に流浪(るろう)しながら、再び己の過去と向き合う――その瞬間から、読む者は明治の荒野に放り込まれる。
『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』は、和月伸宏氏が1994年に週刊少年ジャンプで連載を開始し、単行本は全28巻にわたって刊行された不朽の名作だ。主人公・緋村剣心は、幕末に“人斬り抜刀斎”として無数の命を斬り捨てた過去を背負い、明治維新後は逆刃刀を腰に下げ「人を斬らない」生き方を貫く流浪人となる。かつての弟子・相楽左之助や志々雄真実(ししおまさみち)をはじめとする強敵たちとの激闘、そして神谷活心流道場師範代・神谷薫との出会いと別れを通じて、剣心は己の贖罪(しょくざい)と愛の意味を探し続ける(famitsu.com)。
物語は、薫の道場に厄介者として居候するところから幕を開ける。最初こそ「変わり者」の流浪人扱いされた剣心だが、やがて“逆刃刀”での立ち回りを見せ、里の人々の心に小さな希望を灯していく。だが幕末の亡霊――志々雄真実の放つ炎と冷酷さが、剣心に過去の傷を抉(えぐ)る。薫を守るため、剣心は再び刃を抜き、“不殺”を貫く真の意味を問われるのだ。
アニメ化は1996年から2008年にかけて全95話+OVA・劇場版が制作され、2000年代の名作として今なお愛され続けている。さらに2012年からは大友啓史監督、佐藤健主演の実写映画シリーズがスタート。第1作『るろうに剣心』から『京都大火編』『伝説の最期編』『The Final』『The Beginning』と世界観を拡張し、全世界累計興行収入は100億円を突破するヒットを記録した(en.wikipedia.org)。Netflixでは『Rurouni Kenshin: Origins』として配信され、英語圏のファンも獲得している(netflix.com)。
原画展『るろうに剣心展 30th Anniversary Exhibition 志々雄真実篇』が、2024年10月4日から11月4日まで京都で開催されたのち、東京・大阪へ巡回。和月伸宏先生の生原画が間近に展示され、志々雄一派との死闘シーンや逆刃刀の設計図など、圧巻の迫力を体感できる場として大きな話題を呼んだ(prtimes.jp)。会場内の公式ショップ「黒べこ」では、展覧会限定グッズとして図録、ポストカード、ミニチュア逆刃刀や志々雄モデルの扇子などが販売され、初日には即完売するアイテムも続出した(famitsu.com)。
物語の深淵に触れたいなら、まずは原作コミックスを手に取ってほしい。以下のサイトでは第1巻の冒頭を無料試し読みできる:
- 少年ジャンプ+ https://shonenjumpplus.com
- MANGA Plus by SHUEISHA https://mangaplus.shueisha.co.jp
- コミックシーモア https://www.cmoa.jp
- BOOK☆WALKER https://bookwalker.jp
逆刃刀の切っ先には、刃こぼれ一つない剣心の誓いが宿る。斬れぬ痛み、消せぬ罪、守るべき人々――明治の風に揺れる袂(たもと)を、あなたも感じてみてほしい。


