夕暮れの英国紳士邸。ジョナサン・ジョースターは、暖炉の炎に揺れる絵画をじっと見つめながら、低い声で告げる。「僕の運命を狂わせたのは、ディオだった――でも、僕はあきらめない」。隣に佇む幼なじみのエリナ・ペンドルトンは、そっとジョジョの肩に手を置き、優しく言葉を重ねた。「危険を顧みず突き進むあなたが、私は誇りよ」。その静かな対話が、やがて世紀を超えた宿命の戦いへと導かれていく。
紳士の館に恩人の子として迎えられた少年ディオ・ブランドーは、冷たい笑みを浮かべながら館を支配せんと画策する。次第にジョジョとの友情は裏切りへと変貌し、不気味に輝く石仮面がふたりの兄弟の絆を引き裂く――。『ファントムブラッド』編は、悪意に染まるディオと、宿命を背負うジョジョの壮絶な対決を、70年以上の時を経た今も色あせない劇画タッチで描き出す。
荒木飛呂彦が放つ緻密なデジタル着色版は、雨に濡れた石畳や、血しぶきが飛ぶ剣戟の一瞬一瞬を鮮やかに蘇らせる。ジョジョの周囲には、刀剣のかすかな残響と、呼吸法“波紋”の鼓動が満ち、読者はまるで19世紀末のロンドン郊外に立つかのような臨場感を味わうだろう。
このカラー版では、原作コミックスのモノクロとは異なり、ジョジョの鮮烈な青いコートや、ディオを覆う紅のマントの質感がくっきりと浮かび上がる。波紋の光が手のひらを滑るように伝わり、石仮面の不気味な紋様に薄紫の影が滴る演出は、まさにアートとしても必見だ。
TVアニメ化された『ジョジョの奇妙な冒険』第1部は、2024年に全12話で配信。名優が声を当てるジョジョとディオの緊迫した掛け合いは、SNSで度々トレンド入りし、「血の気が戻ったようだ」と熱烈な声が寄せられた。後に続く第2部以降のスタンド能力ではなく、肉体と意志だけがぶつかり合う“波紋”バトルの生々しさは、アニメファンの心を強く揺さぶっている。
さらに、荒木飛呂彦原画展「JOJO ART of STONE MASK」が六本木ヒルズで開催。石仮面の試作版模型や、荒木先生自筆のラフスケッチ、アナログ着色見本などが一堂に会し、来場者はジョジョとディオの魂のぶつかり合いを時系列で体感できる。会場限定グッズとして、波紋エフェクト付き豆皿や、ジョジョ愛用のシルクハットを模したスマホスタンドが即日完売するほどの盛況ぶりだった。
原作コミックスは1987年から1990年まで週刊少年ジャンプに連載。単行本は全5巻・全152話で完結し、カラー版の再刊により累計発行部数は1,500万部を突破した。『ファントムブラッド』には巻末特別編として、荒木先生の取材メモやキャラクター設定、波紋呼吸法の解説コラムが収録されており、歴史趣味と武器考証へのこだわりが窺える。
作品の魅力は、宿命に抗う主人公の純粋さと、悪の化身ディオの冷徹さが織り成す対比だ。ジョジョの胸に刻まれた十字傷は、名誉と信念への烙印――それを突き破るために彼が放つ“波紋疾走”の疾走感は、まさにページを破る勢いだ。何より、ディオの語る「おれのゴールド・エクスペリエンス…始まる」の予告めいた絶叫は、その後のシリーズにも脈打つ伝説の序章となっている。
はじめて『ファントムブラッド』に触れる方は、まず無料試し読みで石仮面の秘密に手を伸ばしてほしい。以下のサイトで第1巻冒頭をじっくり楽しめる:
少年ジャンプ+ https://shonenjumpplus.com
MANGA Plus by SHUEISHA https://mangaplus.shueisha.co.jp
コミックシーモア https://www.cmoa.jp
BOOK☆WALKER https://bookwalker.jp
ジョジョとディオ――兄弟のように育ち、仇敵と化したふたりの絆の振れ幅が、あなたの胸に新たな波紋を起こすだろう。生と死の狭間で振り絞る一撃を、今すぐその手で確かめてみてほしい。


