夕暮れの亀有交番前。制服姿の両津勘吉が警笛を片手に、腕組みをしながらヒラヒラと舞う浅草の風鈴を見つめる。「おうおう、中川!今日はどんな投資話を持ってきたんだ?」ひょいと顔を覗かせた中川圭一は、スーツのポケットから金の延べ棒そっくりのUSBメモリを取り出し、「最新暗号通貨の相場チャートだよ先輩!」と得意げに差し出す。両さんはにやりと笑い、拳を高く掲げた。「よし、俺もこれで億万長者だ!」──そんな騒々しい日常から一転、彼らが巻き起こす下町コメディには、日本の昭和から平成、令和へと続く文化風俗が鮮やかに刻まれている。
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は、1976年に『週刊少年ジャンプ』で連載を開始して以来、40年間にわたり一度の休載もなく2016年まで続いた、まさに“奇跡のロングラン”を誇る国民的ギャグ漫画だ。単行本は201巻まで刊行され、その累計発行部数は1億5650万部を突破している (ja.wikipedia.org)。ギネス世界記録にも「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」として認定され、漫画史に不滅の足跡を残した。
主人公の両津勘吉は、派出所勤務の巡査長でありながら、最新家電やファッション、投資話に目がないトレンドセッター。公務員としての顔と、常軌を逸した副業漬けの顔を使い分けながら、商店街や学校、競馬場からエスカレーターまで、あらゆる舞台で騒動を巻き起こす。彼の周囲には、中川財閥の御曹司・中川圭一、筋金入りのお嬢様・麗子、手先の器用な寺井洋一、眠り続ける日暮熟睡男、そして魔法で生身の女性になったマリアこと麻里愛…といった、ひとたび場に出れば物語を激しく回転させる強烈なキャラクターたちが集う。
一話完結のスタイルながら、「パチンコ攻略法」「ガンダム風コスプレ騒動」「フリマアプリで財テク」「地下アイドル養成」…と題材は時代と共に移り変わり、流行や社会現象を見事に切り取ってきた。800話を超えるエピソード群は、まさに昭和末期から平成、そして令和初頭へと続く日本の歩みをふりかえる“下町年表”そのものだ。
メディアミックスも幅広い。フジテレビ系列で放送されたTVアニメは1996年から2004年まで毎週344話がオンエアされ、土曜夜のリラックスタイムに下町ギャグを届けた (ja.wikipedia.org)。1985年にはタツノコプロ制作の劇場アニメ、1999年と2003年にはガロップ制作の長編アニメ映画が公開され、香取慎吾主演で2009年からは実写ドラマシリーズも展開された (ja.wikipedia.org)。さらにゲーム化や舞台化、各種イベントとのコラボも盛んに行われ、どんなメディアでも“両さんワールド”が再現された。
作品が築いた“亀有文化”はリアルにも波及し、2005年には亀有駅前の浅草神社境内にこち亀の石碑が建立された (gotokyo.org)。また、亀有駅前交番前には両津勘吉の銅像が置かれ、観光スポットとしても人気を博している。地域と作品が一体となる相乗効果は、今や下町の誇りそのものだ。
グッズ展開も圧巻。公式通販サイトやアニメイトオンラインショップでは、両さんシルエットのTシャツや缶バッジ、風変わりな拳銃型USBメモリ、派出所型ミニチュア貯金箱など、思わずニヤリとさせられるアイテムが多数並ぶ (animate-onlineshop.jp)。漫画ファンならずとも、一度手に取るだけで日常がちょっと楽しくなる逸品ばかりだ。
まずは無料試し読みで『こち亀』の世界を体感してほしい。主要な試し読みサイトは以下のとおり:
- 少年ジャンプ+(https://shonenjumpplus.com/episode/10833519556325021912 ) (shonenjumpplus.com)
- MANGA Plus by SHUEISHA(https://mangaplus.shueisha.co.jp )
- コミックシーモア(https://www.cmoa.jp) (booklive.jp)
- BOOK☆WALKER(https://bookwalker.jp)
ページをめくるたび、予想を裏切る笑いと下町人情のあたたかさが交錯し、昭和の香り漂う交番前にあなたを誘う。40年分の笑いと学び、驚きに満ちた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を、ぜひこの機会に楽しんでほしい。


